この記事では、Fintokeiなどのプロップファームを使ってトレードをしている方、あるいはこれからチャレンジしてみたいと考えている方向けに、税金や確定申告について詳しく解説します。
また、海外FXとの違いも比較しつつ、所得税や住民税がどのように課されるか、そしてどのような準備が必要なのかもお伝えしていきます。
この記事の筆者自身は税理士の資格を持っていませんので、この記事の内容は一般的な情報提供にとどまることをご理解ください。
実際に迷われた場合や、より細かく確認したい場合は、ぜひ税理士や税務署に直接ご相談ください。
プロップファームで得た利益はどう扱われる?
プロップファームは海外に拠点を持つ企業が多いですが、日本国内から利用して得た利益は、日本の税制に則って課税対象となります。
ここで誤解されがちな点は「海外にある会社だから日本の税金は関係ない」という認識です。
これは誤りで、実際には「日本居住者である個人が得た利益は日本国内で課税対象になりやすい」というのが基本的な考え方です。
また、プロップファームの場合は、自己資金ではなく「提供された資金」を運用して得た利益(報酬)を受け取る形になります。
そのため、単なる投資による「譲渡益」や「FX差益」ではなく、「トレード技術を提供して得た報酬」という扱いになる可能性が高いです。
ただし、実際の課税区分は状況によって変わり、税務当局や税理士の判断次第となる部分もあります。
プロップファームの収入区分
プロップファームを使って得た収入は、「事業所得」「雑所得」「給与所得」のいずれかの区分になるケースが考えられます。
以下の表に、それぞれの特徴と判断基準をまとめます。
区分 | 該当例 | 申告時の扱い | メリット・デメリット |
---|---|---|---|
事業所得 | 専業トレーダーとして活動し、個人事業主として届け出をしている。継続かつ安定した報酬を得ている。 | 青色申告が可能(要件を満たせば65万円控除) | メリット:青色申告が可能。損失繰越しや各種控除を受けられるデメリット:規模や継続性の要件が必要 |
雑所得 | 副業として活動。ある程度の報酬があるが、専業と呼ぶには不十分。 | 給与所得等と合算して総合課税 | メリット:申告が比較的簡単デメリット:高所得の場合、累進課税で税率が上がりやすい |
給与所得 | プロップファームに「従業員」として正式雇用されている。 | 給与所得控除等が適用される | メリット:源泉徴収で処理されることが多く、確定申告が不要な場合もデメリット:一般的ではなく門戸が狭い |
事業所得
「専業トレーダーとして、ほぼトレードのみで生計を立てている」「プロップファームを複数利用して継続的に高額利益を得ている」といった場合、事業として成立していると認められる可能性があります。
この場合は、個人事業主(フリーランス)として税務署に開業届を提出したうえで「事業所得」で申告できます。
事業所得として認められると「青色申告」を選択でき、青色申告特別控除として最大65万円の控除が受けられたり、損失が出た際には3年間繰り越して節税できます。
とはいえ、実際に「トレードを主たる事業」として認めてもらえるかは、取引規模や継続性、設備投資の有無など、総合的に判断されます。
「本業としてトレードを行っている」と胸を張って言えるレベルであれば、事業所得を検討してみるのも良いでしょう。
雑所得
最も多いケースが、この「雑所得」として扱われるパターンです。
副業的にプロップファームを利用している場合や、トレード以外にも本業の収入がある場合、あるいは取引規模が小さい場合などは、「技術提供の対価ではあるが事業規模とまでは言えない」と判断されることが多いでしょう。
雑所得として申告する場合は、他の所得(給与所得など)と合算して総合課税されます。
ただし、経費をしっかり計上することで課税対象額を減らすことができます。
給与所得
給与所得として扱われるのは、海外のプロップファームや国内のプロップファームに「従業員」として雇用されている場合です。
固定給や出来高払いなど、給与形態で報酬を受け取っているのであれば、給与所得となります。
ただし、日本で法人化されているプロップファームから給与をもらうようなケースはごく稀ですし、海外からの正式な雇用契約というのも現時点ではそれほど一般的ではありません。
海外FXとプロップファームの税金の違い
「プロップファーム」と「海外FX」では、収益の根拠が異なります。
項目 | プロップファーム | 海外FX |
---|---|---|
収益の性質 | 技術提供の対価(企業資金を運用して得た成果報酬) | 個人資金での為替差益 |
課税区分 | 主に「雑所得」または「事業所得」(給与所得として扱われるのは稀) | 雑所得(総合課税) |
税率 | 所得税(5%~45%)+住民税(約10%) | 所得税(5%~45%) +住民税(約10%) |
確定申告の必要性 | 雑所得として扱われるなら、20万円超(給与所得者の場合)や48万円超(非給与所得者の場合)で要申告 | 同上 |
損益通算 | 他の雑所得と合算して計算可能 (事業所得の場合は分けて考える必要あり) | 他の雑所得(海外FXの他口座・クラウドソーシング等)とは合算可 ※国内FXは申告分離課税のため通算不可 |
海外FXはあくまでも「個人が海外のFX業者と取引して差益を得る」構造です。
一方、プロップファームは「企業が用意した資金を使ってトレーダーがトレードし、成果報酬として収益を得る」構造になります。
海外FXの利益は「雑所得」であっても、主に「為替差益」として認識されますが、プロップファームでは「トレードの成果に応じた成功報酬」と見なされる点が大きな違いです。
海外FXでは「総合課税扱い」として、他の雑所得と同じく累進課税が適用されますが、プロップファームでも同様に総合課税となり、所得税(5%~45%)+住民税(約10%)の累進課税となります。
プロップファームでも、最終的に雑所得か事業所得かを判断される可能性が高いですが、その本質は「技術提供の対価」あるいは「委託契約による報酬」です。
確定申告が必要なライン
プロップファームからの報酬がいくら以上になると確定申告が必要になるのか、よく聞かれます。
これは給与所得者か専業・個人事業主・主婦(夫)等かで異なります。
区分 | 申告が必要となる利益額 | 具体例 |
---|---|---|
給与所得者 (会社員など) | 雑所得が年間20万円を超える | プロップファームの年間利益が30万円 → 10万円が課税対象。 住民税申告も必要。 |
専業・個人事業主など | 雑所得を含む合計所得が基礎控除48万円を超える | 他に収入ゼロなら48万円以下なら所得税非課税。 住民税は別途申告・納付が必要な場合あり |
ただし、住民税は所得税よりも非課税ラインが低いケースもあり、住民税の申告は別途必要なことが多いです。
この辺りは自治体によって扱いが違う部分があるため、不明な場合は必ず問い合わせるか調べてみてください。
所得税と住民税について
プロップファームで得た収益に対しては、一般的に所得税と住民税の両方が課されます。
ここでは、具体的な税率や計算方法を取り上げて解説していきます。
所得税
日本の所得税では、課税所得額に応じて以下のような累進課税制度が取られています。
課税所得というのは、収入から各種所得控除(基礎控除、社会保険料控除、生命保険料控除など)を差し引いた後の金額のことを指します。
また、計算した所得税額には復興特別所得税が加算され、最終的な納付額がわかるという流れです。
例として、2025年時点での国税庁公表の所得税率表を示すと、以下のようになります。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
たとえば、課税所得が300万円の場合には「10%の税率が適用され、そこから控除額として9万7,500円を引く」ことになります。
その結果が所得税額となり、さらにそこに復興特別所得税が加わるため、実際には税率表の数字に対して2.1%上乗せされるイメージです。
具体的には「所得税額 × 102.1%」のような計算で確定申告書では扱われます。
住民税
住民税は「所得割」と「均等割」の2つの仕組みで構成されています。
所得割は通常10%前後で、多くの地域では都道府県民税4%と市区町村民税6%の合計となります。
均等割は所得に関係なく年間約5,000円(市区町村民税2,500円+都道府県民税2,500円)が課される固定額です。
所得税は所得に応じて税率が段階的に上がる累進課税制度ですが、住民税は基本的に一定割合のため、所得が増えても税率はあまり変化しません。
支払い方法は、給与所得者の場合は会社での特別徴収(天引き)が一般的ですが、副業収入などは普通徴収(市区町村からの納付書による支払い)となることがあります。
なお、普通徴収の場合、会社に副業の存在が知られる可能性があるため、気になる方は税務署や自治体に相談することをおすすめします。
必要経費として形状できるもの
プロップファームで得た報酬が、雑所得あるいは事業所得として計上される場合、経費を差し引くことができます。
どこまでを経費として認めてもらえるかは難しい部分ですが、概ね、以下のような支出は経費として認められる可能性が高いです。
- トレードに使用するパソコンやモニターなどの機材購入費
- トレードソフトやEA(自動売買システム)、VPSサーバー等の費用
- トレードに関する書籍や有料セミナーへの参加費
- インターネット回線費用(トレード専用部分の按分が必要)
- プロップファームのチャレンジ費用(試験料)
ポイントは、これらが「プロップファームのトレード収益を得るために、直接必要だったかどうか」を合理的に説明できるかどうかです。
私用と兼用するもの(自宅のネット回線やパソコンなど)は按分計算が必要になることもあるので、日頃からエクセル等に記録しておくと、確定申告の際にスムーズです。
プロップファームと海外FXの損益通算はできる?
海外FXで大きな損失を出している一方、プロップファームで利益が出た場合、それらを損益通算して税金を抑えたいと考える方もいるかもしれません。
海外FXの利益は雑所得(総合課税)として扱われ、プロップファームの報酬も雑所得、もしくは事業所得になる可能性があり、雑所得同士ならば基本的には通算できる可能性があります。
つまり、海外FXの雑所得がマイナスなら、プロップファームの雑所得と相殺して課税所得を減らすことが可能です。
一方、もし事業所得として扱われるとなった場合は、雑所得とは別枠になるので、損益通算の可否については要注意です。
自分の所得がどのように区分されるか確認するためにも、税理士や税務署に相談しておくのが安心です。
- 事業所得は事業所得同士、雑所得は雑所得同士でなければ通算できません
- ただし、先物取引に係る雑所得(国内FXなど)は申告分離課税となるため、海外FXやプロップファームの雑所得(総合課税)とは通算できない点にも注意が必要です
確定申告の手続きと必要書類
確定申告は、例年2月16日から3月15日の間に行われます。
確定申告時に準備すべき主な書類は以下のとおりです。
必要書類・資料 | 内容 |
---|---|
マイナンバー関連書類 | マイナンバーカード、または通知カード+本人確認書類 |
プロップファームの収支明細 | 出金履歴、取引履歴のスクリーンショットやPDFなど(利用しているサービスで記録形式が異なる) |
必要経費の証明資料 | 領収書、レシート、クレジットカード明細など |
源泉徴収票(給与所得者のみ) | 勤務先から発行される書類1月~12月の給与や天引きされた所得税が記載 |
各種控除証明書 | 生命保険料控除、医療費控除、寄付金控除の証明書など |
書類が揃ったら、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や、会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)を使って申告書を作成できます。
電子申告(e-Tax)を利用すると、青色申告特別控除が最大65万円になるなどのメリットもあるので、事業所得として申告する方は検討してみましょう。
プロップファームを利用するメリットと税金リスク
プロップファームは大きな資金を使ってトレードできる分、成功した際の報酬も大きいですが、大きく稼ぐと税金も高くなります。
プロップファームの利益配分で数百万円、数千万円という報酬を得た場合、当然その分だけ所得税や住民税も多くかかります。
さらに、給与所得や事業所得、雑所得などと合算されてしまうと、累進課税によって税率がグッと上がる可能性もあります。
プロップファームを利用するメリットとして、自己資金が少なくても大きな資金を動かせることが挙げられますが、忘れてはいけないのが最終的に支払う税金まで含めてシミュレーションをしておくことです。
せっかく大きな利益を出しても、確定申告時に想定外の納税額が発生して、資金繰りに困ってしまうケースがあるかもしれません。
法人化という選択肢はある?
「個人ではなく法人を設立して、法人名義でプロップファームと契約すれば節税になるのでは」と考える方もいらっしゃいます。
しかし、法人化には以下のようなハードルやリスクがあります。
- 設立費用や維持コスト(法人住民税、税理士費用など)がかかる
- 海外プロップファームによっては法人契約を受け付けていないところもある
- 法人で利益が出た場合、役員報酬として個人の給与所得に移す際にも所得税がかかる
また、法人化した場合、トレードによる利益が「含み益」の段階でも決算時に資産評価として捉えられ、課税対象になる可能性があります。
そのため、安定して高額の利益を継続的に上げられているわけでなければ、法人化は逆にコストが増え、メリットが少ないともいわれています。
もちろん大きな事業規模で、トレード専業のスタッフを雇用して組織運営するレベルならば法人化に大きな意義があるかもしれませんが、一般の個人トレーダーにとっては、法人化は慎重に検討すべきテーマです。
プロップファームの税金についてのまとめ
ここまで、プロップファームで得た報酬にかかる税金と確定申告について詳しくお話してきました。
主なポイントを振り返ると、以下のようになります。
- プロップファームの報酬は「自己資金での投資利益」ではなく、「技術提供の対価」として扱われる可能性がある
- 所得区分としては、事業所得・雑所得・給与所得のいずれかに分類されるが、多くは雑所得か事業所得になる
- 給与所得者の場合は、雑所得が20万円を超えると確定申告が必要(住民税申告は別途必要)
- 専業や個人事業主、主婦(夫)の場合は、合算所得が基礎控除48万円を超えると課税対象
- 事業所得として認められると青色申告や損失繰越などのメリットがあるが、安定した取引規模などが必要
- 経費をしっかり計上し、必要に応じて損益通算も検討する(ただし雑所得か事業所得かで扱いが変わる)
- 法人化は設立コストや維持費もあり、一般の個人トレーダーにはハードルが高い
プロップファームを利用することで、より大きな資金を運用し、収益拡大のチャンスが広がりますが、その分税金についてもしっかりと認識し、リスク管理をしていくことが大切です。
最後に繰り返しになりますが、この記事はあくまで一般的な情報提供です。
プロップファームや海外FXに関わる税制は、まだ発展途上の部分も多く、今後見解が変わる可能性もあります。
また、個々の状況によっても扱いが異なりますので、最終的には税務の専門家や税務署に相談して、正確な知識を得るようにしてください。
プロップファームを活用してより大きなトレードの可能性を目指すと同時に、税金のこともしっかり押さえて、有意義なトレードライフを送ってください。
プロップファームの税金に関するよくある質問
プロップファームと海外FXは同じなのでしょうか
プロップファームでは海外FX業者の口座を個人で開設して取引するのではなく、企業が用意した資金を使ってトレードを行います。
得られる利益が「成功報酬」という位置づけになりやすい点が大きく異なります。
海外FXの場合は自己資金で取引し、為替差益を得る形になるため、課税区分などの扱いも一部違いが出てきます。
海外のプロップファームだと税金を払わずに済むのでしょうか
海外に本社があるプロップファームを利用した場合でも、日本に居住している限り、日本の税制に従って所得税や住民税を納める必要があります。
海外法人との契約でも、日本国内で収入が発生したとみなされます。
したがって、利用先が海外か国内かによって税金を回避できるわけではありません。
個人事業主として活動する場合、どんな届出が必要ですか
プロップファームからの収益を事業所得として申告するならば、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があります。
開業届は個人事業の開始から原則1か月以内、青色申告承認申請書は開業から2か月以内に出すのが基本です。
提出しないままでも雑所得としては申告できますが、青色申告などの特典が受けられなくなる可能性があります。
副業扱いの場合の確定申告では何が大切でしょうか
会社員などで給与所得があり、副業としてプロップファームを利用する場合、年間の雑所得が20万円を超えれば原則として確定申告が必要です。
特に住民税の申告方法に注意しないと、会社に副業が把握されるリスクが高まる場合があります。
必要経費として計上できる費用も、きちんと証拠を残しておくことが大切です。
青色申告のメリットとは何でしょうか
青色申告では、最大65万円の特別控除が受けられる可能性があり、所得を大きく圧縮できます。
加えて、損失が出た場合にも損失繰越の制度を活用し、翌年以降の利益と相殺できることがあります。
ただし、帳簿付けや書類管理などの手間が増えるため、専用の会計ソフトを使うなど準備が重要です。
法人化すれば大幅に節税できますか
法人化すると、一定のスキームで節税できる可能性はありますが、設立費用や維持コスト、社会保険料の負担が増えるといったデメリットもあります。
プロップファームによっては法人名義での契約ができない場合もあり、含み益のタイミングで課税されるリスクも考慮が必要です。
大きな利益が長期間見込めない限り、個人での申告のほうがメリットが大きいケースが多いです。
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